パラスポーツという言葉は聞いたことがあるけど、その中身はよく知らないという方は多いのではないでしょうか。
「パラスポーツ」とは、身体、もしくは知能に障害のある人が行うスポーツのこと。
オリンピックと同じ都市・同じ年にパラリンピックが開催されますが、パラリンピックに関する話題はオリンピックほど報道されないもの。
日本におけるパラスポーツの現状とは、そして、コロナウイルス感染症によりどのような影響があるのか、紹介します。
日本におけるパラスポーツの現状
日本の龍谷大学が学生に行なったアンケートによると、パラリンピックを知っている人は約8割。
パラリンピックを知った手段として多いのは、テレビ、新聞・雑誌、インターネットなどが挙げられており、様々な媒体から情報を得ていることが分かります。
しかし、パラスポーツへの出場資格や、実際に見に行ったかの問いに関しては、ほとんどの学生が正確に答えることができない、また見に行った事がないと回答。
つまり、日本では、パラスポーツの存在は認知されているが、競技自体は知らないというケースが多いのが現状といえるでしょう。
コロナ禍による影響
2020年は新型コロナウイルスの流行による影響がさまざまな方面に出ましたが、パラスポーツも例外ではありません。
まず、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルス感染症の影響によって1年延期。
そして、練習拠点が一時閉鎖されるなど競技活動自体にも影響を及ぼしました。
2015年に発足したパラスポーツの組織である「日本財団パラリンピックサポートセンター」(パラサポ)によると、2020年の2月頃からパラスポーツの大会やイベントが中止になってほか、大規模な交流イベントや研修プログラムも中止。
練習場所が閉鎖されたことにより、選手が集まることも難しくなったのです。
しかし、このような新型コロナによる逆境の中でも、前を向いているパラスポーツのアスリートは多くいます。
例えば、再開した大会で自己ベストを更新した陸上競技の中西麻耶選手。中西選手は9月5日のパラ陸上日本選手権で、女子走り幅跳びに出場し、その大会でアジア新記録を打ち出し、パラリンピックに勢いをつけました。
練習場を使用できない中、自宅などで工夫して練習に取り組み、練習のレベルを落とさなかったことが結果に結びついたとしています。
また、相手に合わせたクレバーな戦術が特徴のテコンドーの田中光哉選手はコロナ禍の自粛期間に毎日道場に通い練習を継続。
コロナ禍による大会の中止や十分な練習場所が確保されないなど、多くの影響が及ぶ中、アスリートは様々な工夫をしてパフォーマンスを落とさないように取り組んでいるといえるでしょう。
日本のパラスポーツのビジョン
日本のパラスポーツのビジョンとして、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会は3つの柱を掲げています。
1つ目は競技力の向上として「全国・世界的な各種競技大会が定期的に開催され、国際競技力が向上し、多くの日本選手が世界的に活躍する社会を作ること」。
2つ目は社会の活力向上として「生涯スポーツと競技スポーツを通して、障がい者の社会参加及び地域参加や国民の連携やその強化を図ること」。
そして、3つ目はスポーツの普及拡大として「日常的にスポーツを楽しむ社会を作ること」。
つまり、パラスポーツは、競技的な側面だけでなく、一般の人でも楽しめるような社会作りを目指しているといえるでしょう。
そのための目標として、2020年の目標と2030年の目標が段階的に設定されています。
2020年の目標は、パラリンピックでの具体的なメダルの個数や全国の半数以上にパラスポーツが広がること、法人化を通して資金面でも目標が設定されています。
パラリンピックは2021年に延期となってしまいましたが、各方面でパラスポーツの活動は行われており、コロナ禍であるからこそ資金面で援助したいという人も増えているようです。
2020年の目標設定は、まずパラスポーツが全国的に広がり、各地域の土台を作ることといえるでしょう。
次に、2030年の目標として設定されていることは、パラリンピックでのメダルの個数や全国にパラスポーツが広がること、そして法人化による資金調達など。
文言だけ見ると2020年から大きく変更されていませんが、全ての目標で数字が大きく更新されています。
つまり、まずは全国的にパラスポーツの土台を作ったところから、生活により密接につながる目標に変わったといえるでしょう。
日本におけるパラスポーツはまだまだこれから発展する分野です。
まずは全国的に広がることが掲げられていますが、ビジョンが全国的に浸透していない状況でもあります。
したがって、目標を達成するためには、まず、ビジョンを広げることが重要となるでしょう。
ビジョン実現のための取り組み
ビジョン実現の取り組みとして
- パラスポーツの振興体制の整備及び普及振興
- 国際競技力の強化
- 障害者スポーツの国民理解の促進
- 障害者スポーツの支援体制の充実
などが挙げられます。
1つずつ見ていきましょう。
パラスポーツの振興体制の整備及び普及振興
様々な団体と連携することで、競技としてのサポート体制はもちろん、障がい者が日常的にスポーツを行う環境を整備するため、全国的な大会やイベントを開催し、パラスポーツへの理解を深めることを目標としています。
国際競技力の強化
パラリンピックをはじめとしたパラスポーツの国際大会で成績をおさめることによって、日本のパラスポーツの地位・評価の向上を目指すとしています。
障がい者スポーツの国民理解の促進
パラスポーツへの理解を深めるために、情報を発信する取り組みを推進するとしています。
現在は情報は誰でも手に入る時代です。
だからこそ、情報の発信によって少しでも多くの人に知ってもらい、理解してもらうことが鍵となります。
障害者スポーツの支援体制の充実
様々な企業及び個人がパラスポーツの支援に参加できるプログラムを充実させるとしています。
まとめ
インターネットやテレビなどにより、認知度は上がってきているものの、実際に見たことが無い、という人が大多数を占める「パラスポーツ」。
多くの選手の活躍で注目度が上がる中、社会に根付かせていくことが目標とされる分野であり、そのためのさまざまな様々な取り組みが期待されます。
(TOP写真提供 = Studio 72 / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
『パラスポーツを普及するために ―必要とされる課題・改革―』(龍谷大学 松畑ゼミB 早川太悟 他著)
コロナ禍のパラスポーツ界、現状は?試合はないが…スポンサー獲得の成功例も(東京オリンピック・パラリンピック ガイド|Yahoo! JAPAN)