スポーツ大学・体育大学で学ぶメリットと卒業後の就職先・将来性とは

体育学を教えている大学のことをスポーツ大学や体育大学(以下、スポーツ大学)と呼びます。

大学を卒業すると「学士」という学位が付与され、学位は履歴書に学歴として書くことができます。

その学士のなかに「体育学」があり、体育学で学士を得た人を、体育学士といいます。

スポーツ大学を卒業して体育学士になると、どのような将来展望が描けるのでしょうか。

この記事では、スポーツ大学の基礎知識を紹介したうえで、スポーツ大学卒業者が就く職業などを解説します。

*1:http://www.niad.ac.jp/media/011/202011/no9_13_R1meishou_bachelor.pdf

スポーツや体育を学べる大学

スポーツや体育は、体育学部以外でも学ぶことが可能です。

体育学部と似た学部として、スポーツ健康学部や人間健康学部などがありますが、これらの学部を卒業すると、スポーツ科学士やスポーツ健康学士、スポーツマネジメント学士などの学位を得ることができます。

また、教育学部のある教育系の大学では、スポーツ教育やスポーツ学、武道学などの教育学士を取得できます。

体育やスポーツを学ぶことができる大学には下記のような国公立・私立大学があります。

国公立大学
東京学芸大学などの全国の教育系の大学
筑波大学体育専門学群 
名桜大学人間健康学部スポーツ健康学科
鹿屋体育大学体育学部 

私立大学
立命館大学スポーツ健康科学部
東海大学体育学部
同志社大学スポーツ健康科学部
国士舘大学体育学部
大東文化大学スポーツ健康科学部
順天堂大学スポーツ健康科学部
日本体育大学体育学部
流通経済大学スポーツ健康科学部
東海学園大学スポーツ健康科学部
大阪体育大学体育学部
天理大学体育学部
国際武道大学体育学部
日本女子体育大学体育学部
仙台大学体育学部
環太平洋大学体育学部
東京女子体育大学体育学部

スポーツ大学に入るには

スポーツ大学に入るには、一般的な知識が問わられる入試に合格する方法の他、実技が課される入試に合格する方法などがあります。

ここでは、日本体育大学と筑波大学、日本女子体育大学の例を挙げて紹介します。

日本体育大学の場合

日本体育大学体育学部の入試科目は、国語と英語の2教科です。

ただし、日本体育大学スポーツ文化学部の武道教育学科の入試では、国語と英語のほかに、武道という実技試験が課されます。

筑波大学の場合

筑波大学の体育専門学部の入試は次のとおりです。

  • 大学入学共通テスト(旧センター試験、1次試験):国語、数学、理科、外国語、地歴、公民のなかから5教科5~6科目
  • 個別学力試験(2次試験):小論文、実技日本女子体育大学の場合

日本女子体育大学の体育学部には、「推薦」枠があります

その概要は

  • 運動技能、学力、人物に優れ、出身高校の校長が推薦する人
  • 日本女子体育大学を第1志望校とする人
  • 学業成績全体の評定平均値が3.0以上
  • 教科「保健体育」の評定平均値が3.5以上
  • 選考:書類審査(調査書、推薦書)、実技、グループ面接、スポーツ歴に関する口頭プレゼンテーション

となっています。

このうち、選考で課せられる実技は、

器械運動・新体操・100m走・300m走・1500m走・3000m走・100mH・走り幅跳び・走り高跳び・三段跳び・砲丸投げ・円盤投げ・やり投げ・50mクロール・50m平泳ぎ・50m背泳ぎ・50mバタフライ・200m自由形・200m個人メドレー・バスケットボール・バレーボール・ハンドボール・サッカー・ソフトボール・テニス・ソフトテニス・バドミントン・一般技能

の1種目です。

スポーツ大学を卒業したあとの進路

写真提供 = Brett Jordan / Unsplash.com

スポーツ大学を卒業すると、

  • 学校の保健体育の教師
  • プロスポーツ選手
  • 国内や世界で活躍するアマチュアスポーツ選手
  • スポーツインストラクター
  • スポーツチームやスポーツ団体の従業員
  • スポーツ用品メーカーの従業員

などに就職することができます。

これらは、1)教師、2)スポーツ選手、3)スポーツビジネスの3つに大きく分けることができますが、教師になるメリットは、公務員になることの安定性と子供たちに教えるやりがいなどがあげられます。

スポーツビジネスは将来有望

スポーツ大学卒業者がスポーツビジネスに進むことは、よい選択といえるでしょう。

スポーツ庁は2018年に「新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向」というレポートを公表しました(*2)が、それによると、日本のスポーツビジネス市場は2002年の約7兆円から2012年には約5.5兆円へと縮小したものの、2025年には15.2兆円に拡大するだろうと予測しています。

それは、世界のスポーツビジネス市場が2005年の465億ドルから2017年の909億ドルへと約2倍に拡大しているからです。

市場規模の大きさは、活躍できる場の数に比例します。

また、スポーツは、体を動かしたり感動的な体験を提供したりする以外にも、たくさんのビジネス・ポテンシャルを持っています。

*2:https://www.mext.go.jp/sports/content/20200330-spt-sposeisy-300000950-01.pdf

スポーツはこんなビジネスを生む

プロスポーツの大会を開催したり、スポーツ観戦をしたり、アマチュアスポーツ人口を増やしたり、スポーツ用品を製造販売したりするビジネスは、スポーツビジネスの王道です。

スポーツを愛する気持ちは人々の根源的な感情であるため、このビジネスが途絶えることはないでしょう。

つまり、スポーツ大学卒業者は「消えないビジネス」に携わることができるわけです。

スポーツは今、ITやインターネットと深く関わっており、スポーツ大学卒業者がITスキルやインターネットスキルを獲得すると、「スポーツビジネス+ITビジネス+インターネットビジネス」に関わることができます。

また、スポーツは健康と深く関わるものであり、健康は医療に関わるもの。つまり、スポーツビジネスは、健康ビジネスや医療ビジネスと親和性が高いといえます。

このことからも、スポーツ大学卒業者のビジネスチャンスは広いといえるでしょう。

そして、スポーツ経験者は一般的に、社会やビジネスシーンにおいて「さわやか」「体力がある」「根性がある」「努力家」「協調性がある」「リーダーシップがある」と認知されています。したがって、人材ビジネスを展開することも可能です。

このほか、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールは、地方で小規模プロスポーツビジネスの「種」となるもの。つまり、スポーツ大学卒業者は、スポーツチームやスタジアムなどのスポーツ施設を中核にした、地方のまちづくりビジネスに携わることができます。

まとめ ~大きな可能性がある

スポーツが大好きな人や特定の競技で秀逸な成績を残している人がスポーツ大学に進学することは自然な流れです。

しかし、スポーツ愛好者のなかには、「スポーツ大学を出てもつぶしがきかない」と思っている人もいるはずです。

確かにビジネスでは、体育学部より、法学部や経済学部や工学部などのほうがつぶしがきく気がします。ところが、スポーツビジネスには、大きなビジネスチャンスが広がっていることがわかります。

スポーツを愛しているうえに体育学士を持っている人がスポーツビジネス界に飛び込めば、大きなアドバンテージになるでしょう。

(TOP写真提供 = Element5 Digital / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

スポーツ学を学べる国公立大学の一覧(スタディサプリ)

体育学部のある大学一覧(大学偏差値ノート)

学位に付記する専攻分野の名称一覧(学士)(独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構)

ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)(順天堂大学)

名桜大学学位規則

体育学部の教育研究上の目的及び3つのポリシー(国士舘大学)

入学者選抜情報(日本体育大学)

一般選抜(日本体育大学)

筑波大学体育専門学群

学校推薦型選抜概要(日本女子体育大学)

新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向(スポーツ庁)