世界最古の格闘技・レスリングの歴史

レスリングの歴史を振り返ると、紀元前には誕生していたことが記録に残っています。

今回は、そんな長い歴史のあるレスリングの成り立ちや、日本におけるレスリングの歴史について解説します。

レスリングの歴史と成り立ち

もともと、レスリングは科学と神の領域だとされており、そのためレスラーには、文武両道が求められました。そんなレスリングの成り立ちと歴史を解説します。

人類最古の格闘技

レスリングの起源は、5000年前(紀元前3000年)の古代シュメール人の時代までさかのぼり、また、古代エジプトにもレスリングに関する考古学的記録が残っています。

エジプト、ナイル川中流東岸のベニ・ハッサンにある墓にも400組におよぶレスラーたちの姿が描かれた絵が発見されており、レスリングのルールや当時活躍していた団体、審判が既に古代エジプト時代に存在していたことがわかっています。

戦い方は、現在のフリースタイルのレスリングに似ており、対戦相手を投げ飛ばすか、もしくは押し倒し、相手の背中、お尻、胸、肘、または膝が地面につけば勝利。

女子レスリング

女子によるレスリングの起源は、紀元前7世紀の古代ギリシャ時代のスパルタ(現在のペロポネソス半島南部)と言われています。ちなみに、スパルタ以外の他の地域では、女性がレスリングを行うことは許されませんでした。

当時は女性に様々な制限が課せられていましたが、スパルタでは、女性が将来男性を出産した際に教育ができるようにと、男性と同じく教育を受けることができました。

特にレスリングが盛んで、傷跡のない女性は弱いとみなされ、逆に傷跡が多いほど尊敬されていたようです。

しかし、ローマ帝国の時代になると、女性がレスリングをすることも、スポーツを行うことも無くなりましたが、その後20世紀中頃に、女子レスリングが再び復活しました。

オリンピック競技としての歴史

写真提供 = Bryan Turner / Unsplash.com

古代オリンピック

古代ローマ時代に、貴族や兵隊、羊飼いに人気の高かったレスリングは、紀元前688年の23回目の古代オリンピックでオリンピック種目となりました。ちなみに、当時最も有名だったレスラーは、ミロンという人物で、哲学者ピタゴラスの弟子でした。

しかし、393年に皇帝テオドシス一世によって異教ゲームが禁止され、古代オリンピックは公に行われることができなくなりました。

近代オリンピック

オリンピックは、1896年の第一回アテネ大会で、近代オリンピックとしてよみがえりました。

そしてレスリングは、第二回のパリ大会を除き、全ての大会で実施されています。

1912年には、国際競技団体が設立され、都度ルールなどの整備が行われていましたが、1968年のメキシコシティでの大会後、大きなルール改正が行われました。ちなみに、この時から試合場が四角形から、円形になったのです。

日本におけるレスリング

日本におけるレスリングの第一歩は大正時代のことです。

1924年(大正13年)に開催された第8回のパリオリンピックでは、日本から19選手が出場しました。陸上やテニスなどの選ばれし日本代表選手の中には、当時、まだ国内には競技団体がないレスリングの内藤克俊氏もいました。

日本におけるレスリングは、1931年に早稲田大学に部ができたことから始まったと言われています。その翌年である1932年には、大日本アマチュアレスリング協会が設立されました。

つまり、日本ではまだ誰も本格的にレスリングを行っていない時期に、内藤氏は日本代表として、オリンピックへの出場を果たしたのです。

内藤氏は元々柔道をしており、留学先のアメリカでレスリングに出会いました。現地大学のレスリングチームのキャプテンも務めあげ、それを知った駐在大使の推薦により、オリンピック選手団に加えられたのです。さらに内藤氏は、フリースタイルのフェザー級で見事に、銅メダルを獲得したのです。

パリ大会では、日本勢で唯一のメダル獲得であり、歴史的にも大きな偉業として記録されています。

内藤氏は、レスリングで結果を残した業績に留まらず、スポーツを多様性の相互理解に有力な方法と紹介しています。

さらに、柔道のオリンピック追加にも触れており、日本のスポーツを世界に発展させるために貢献した人物と言っても間違いないでしょう。

内藤氏から始まった日本のレスリングの歴史ですが、1932年のロサンゼルス大会では日本からも多くの選手が出場しました。1952年のヘルシング大会では、バンタム級で石井庄八氏が金メダルを獲得し、その後も、日本選手はオリンピックで数々のメダルを獲得しています。

また、日本におけるレスリングの歴史を語る上で欠かせない人物として、日本レスリング協会会長の福田富昭氏が挙げられます。

福田氏は現役選手として活躍したのはもちろん、引退後も指導者として女子レスリングのオリンピック追加に尽力しました。その結果、2004年のアテネ大会で正式種目として追加されました。

まとめ

世界最古の格闘技として成り立ち、様々な時代を乗り越えてきたレスリングについて解説しました。そして、日本においてもレスリングは古い歴史があり、オリンピックとも密に関わってきたことがわかりました。

本記事が、レスリングの歴史について知りたい方の参考になれば幸いです。

(TOP写真提供 = sportpoint / Shutterstock.com)


《参考記事一覧》

オリンピックの歴史(公益財団法人 日本オリンピック委員会)

レスリング競技の起源|人類最古の格闘技(OLYMPICCHANNEL)

レスリングの歴史(EIGHTIE’S)

10. 日本のレスリング『脈々と流れる“日本ならでは”の伝統』【オリンピックの歴史を知る】(笹川スポーツ財団)