常温でも発芽しにくく長期保存が可能で栄養価の高いじゃがいもは、主食としても使われる人気の野菜です。日本でも根菜として家庭料理に普段からよく使われるじゃがいもですが、結構知らないことも多いです。それでは、まずじゃがいもについて説明しましょう。
・じゃがいもの原産地と名前の由来
原産地は南米のアンデス山脈、チチカカ湖の周辺です。日本へは江戸時代にオランダ船の積荷によって長崎に伝えられました。日本での生産が盛んになるのは明治以降、北海道の開拓の際に栽培されるようになり、北海道は日本での一大産地になっています。
名前の由来は、インドネシア・ジャカルタからやって来た芋の意味で、ジャガタラ+いもから呼ばれるようになりました。和名は「馬鈴薯(ばれいしょ)」です。
・じゃがいもは植物としてどの部分?
じゃがいもはナス科の植物で、トマトやナスの仲間です。芋の部分は根ではなく、正確にいうと「茎」の部分です。
・じゃがいもの旬の時期は?
日本では、伝わった長崎と開拓地北海道が主な産地です。長崎では、秋植えされたものが5月から6月に新じゃがとして出回ります。一方で北海道は、春植えのものが7月に新じゃがとして出回ります。じゃがいもの旬は5から7月と言われています。
じゃがいもの糖質ってどれくらい?
じゃがいもは主食にもされるように、糖質だけでなく多くの栄養素が含まれています。
・糖質について
炭水化物と呼ばれる栄養素は、糖質と食物繊維を合わせたものを呼びます。その中の糖質は、穀物や砂糖類の主な成分で、食物として摂取すると体内でブドウ糖に分解されエネルギー源となります。タンパク質や脂質に比べて消化吸収が速いので、食べて直ぐにエネルギーとして利用されることから、スポーツ選手にとっては、トレーニングや試合の前・中・後に摂取するのに最も適した栄養素です。また、ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源です。ただし、運動しない人が多く摂取しすぎると体脂肪として蓄積されてしまうので要注意です。
・じゃがいもの糖質
じゃがいもの糖質ですが、他の主食となる食材と比べてみると、意外に低いことが分かります。
じゃがいも | 13.8グラム |
スパゲッティ | 29.2グラム |
ごはん | 35.6グラム |
パン | 42.2グラム |
(いずれも100クラムあたりの重量)
・じゃがいものその他の栄養価
じゃがいもには糖質以外にもビタミンCやB1、カリウムなどの栄養素や食物繊維が含まれています。
じゃがいもに含まれるビタミンCは、でんぷんに包まれているので保存や加熱にも壊れないのが特徴です。ビタミンCは水溶性のビタミンで、タンパク質の一種であるコラーゲンの生成に働きます。コラーゲンは体を作る細胞の結合や、血管・筋肉・皮膚などを丈夫にする物質です。
ビタミンB1も水溶性のビタミンで、糖質がエネルギーになるときに必要な栄養素です。体内の疲労物質の燃焼にも関わり、神経機能を正常に保つ役割もあります。
カリウムは、人体に必要なミネラルの一種で、細胞の内外の浸透圧を調整し、筋肉の収縮にも関わっています。スポーツ選手の筋肉けいれんは、カリウム摂取の不足が原因のひとつです。ナトリウムを排出する働きもあるので、塩分の取り過ぎを調節してくれます。
クロロゲン酸という皮に多く含まれるポリフェノールは、強力な抗酸化作用があります。
食物繊維が豊富なことはダイエットにも効果があります。水溶性の食物繊維は、血糖値の急激な上昇を抑え、コレステロールの吸収を抑えます。また、ナトリウムと結びついて排泄を促進するので血圧を下げる効果もあります。不溶性の食物繊維は便通を促し、便秘を解消する効果もあります。
・じゃがいものカロリー
エネルギーは100gあたり76キロカロリーです。他の根菜類に比べると、低カロリーで免疫を高めるとしても注目の里芋は58キロカロリー、甘くて食物繊維の豊富なさつまいもは132キロカロリーですので、芋類では中間に位置するカロリー量です。ちなみに白米100gのカロリーは156キロカロリーですので、半分以下ですね。
じゃがいもをヘルシーに食べるには…調理のコツを解説!
・まずは調理の前に
①芽や緑化に注意
じゃがいもの芽にはソラニンという毒素が含まれており、大量に摂ると下痢や腹痛、吐き気、めまいを起こします。緑化も日光にあたることで生じ、ソラニンを含んでいますので取り除いて使いましょう。りんごに含まれるエチレンはじゃがいもの発芽を抑える働きがあるので、長期の保存にはりんごと一緒に新聞紙に包んで冷暗所に置くとよいでしょう。
②黒色の斑点にも注意
じゃがいもを切った際に、茶色や黒色の斑点が見られることがあります。細菌に感染したことによる「輪腐病」などの病気であることもあります。ちゃんと取り除けば食べられますが、その上しっかりと水にさらしてから調理するとよいでしょう。
③変色を防ぐには
切った後に黒く変色する理由は、じゃがいもに含まれるチロシナーゼが、紫外線を浴び酸化しメラニンに変わることによって起きます。チロシナーゼは水溶性なので、よく水にさらすと溶けて働けなくなり変色が防げます。黒くなっても毒性はありません。
・調理のコツ
①揚げずに調理する
コツの一番目は、「揚げずに」調理することです。ポテト料理はフライドポテトなど、大量の油で揚げる料理もありますが、ヘルシーに調理するには揚げずに、使っても少量の油で表面を焼くだけにすると脂質の量が抑えられます。また、電子レンジで加熱すれば油を使わず、水も使わずに調理できます。電子レンジで調理するメリットとしては、水溶性のビタミンCをゆでるよりも多く摂ることができます。
②汁物にすることで栄養分を無駄なく摂取
じゃがいもに含まれる栄養分は、ビタミンC・B1、カリウム、ポリフェノールも水溶性です。できるだけ味噌汁やスープにすることで無駄なく摂取できます。
③皮付きで調理する
じゃがいもは皮がありますが、むらなくゆでたい時には皮付きのまま水からゆでるか、電子レンジで加熱しましょう。じゃがいもの皮はクロロゲン酸というポリフェノールを含んでおり、強力な抗酸化作用がありますので、皮付きのまま食べられる工夫をするとよいでしょう。ゆでた後に皮をむく場合は熱いうちにむきます。忙しい時やマッシュポテトにする場合は、皮をむき、切ってからゆでます。ただし、ゆで上がりは少し水っぽくなります。
④調理法やレシピで品種を選ぶ
じゃがいもには多くの品種があり、それぞれに特徴があります。調理する際にはそれぞれの品種の特徴を踏まえるとよいでしょう。
大きくは、粉質と粘質に分けられます。粉質はふかしたお芋の表現でよく使われる「ホクホク」感のあるものを言います。一方の粘質は、粘り気のあるお芋で、煮ても煮崩れをしにくく、煮物向きと言えます。
煮物に適した品種は、メークイン、レッドムーン、とうや、粉吹きいもには、男爵、キタアカリ、インカのめざめ、マッシュポテトには男爵、キタアカリ、フライドポテトには北海こがね、キタムラサキ、十勝こがね、サラダにはジャガキッズレッドなどです。
ダイエット中におすすめ!じゃがいもを使ったレシピをご紹介
じゃがいものレシピは多くありますが、「ダイエット中におすすめ」というテーマのレシピを紹介します。
じゃがいもは糖質が多いため、レシピとしてバランスをよくするには、主食の糖質の量を抑えてタンパク質と組み合わせるとよいでしょう。例えば、日本のおふくろの味の代名詞の「肉じゃが」ですが、じゃがいもに、肉と、玉ねぎ、にんじん、さやえんどうなどの野菜と、しらたきを加えることでバランスのよいおかずになっています。
また、バターやマヨネーズなどの脂質の多いレシピはカロリーの摂りすぎになりますので注意しましょう。
皮のまま食べることで他の栄養素も摂取することができます。「焼く」「ゆでる」を中心とした、おすすめのじゃがいもレシピを紹介します。
・じゃがいものチーズポテトフライ風
サクッとしつつホクホクのチーズ風味でポテトフライ風の副菜になります。
材料(2人前)
じゃがいも 2個
オリーブオイル大さじ1、粉チーズ大さじ1、パセリ、塩コショウ 適量
作り方
①じゃがいもの皮をむき、8等分に切り、水にさらしてから水分を切る。
②耐熱ボウルに入れ、ふんわりラップし600Wで3分レンジで加熱する。
③ボウルに②で加熱したじゃがいもとオリーブオイルを入れて混ぜる。
④アルミホイルを敷いた鉄板にじゃがいもを並べて、トースターで焼き色がつくまで焼く。
⑤粉チーズ、パセリ、塩コショウを加えてあえて出来上がり。
・じゃがいもの青のりおかか
皮に含まれるクロロゲン酸を摂ることができ、強い抗酸化作用と血液低下作用を期待できるレシピです。懐かしい味わいです。
材料(2人前)
じゃがいも2個、青のり・削り節 適量、ウスターソース小さじ2
作り方
①じゃがいもをよく洗い、皮付きのまま水からゆでる。または、キッチンペーパーで包み、をくぐらせラップで包んだじゃがいもを、電子レンジで600Wで3分加熱します。
②適当に割って盛り付け、青のり・削り節をふりかけ、ソースをかけて出来上がり。
・じゃがいもの炒めなます
じゃがいもの細切りは炒め物にすると食感がよくおいしいです。お酢を加えるので食欲がない時などにもさっぱりしてよい副菜です。
材料(2人前)
じゃがいも 2個、長ネギ(玉ねぎでも)2分の 1、オリーブオイル大さじ2分の1、酢大さじ2、砂糖小さじ2、白炒りごま 適量、塩コショウ 少々
作り方
①じゃがいもの皮をむき、千切りにし、水にさらしてから水分を切る。長ネギも千切り。
②フライパンにオリーブオイルを加え、①を炒め、塩コショウをふる。
③じゃがいもがしんなりしてきたら、酢・砂糖・塩を回し入れる。
④最後に白炒りごまを加えて出来上がり。
・ジャケットポテト
ジャケットポテトは、ロンドンのオフィス街でランチによく食べられているソウルフードのひとつです。油を使わないのでヘルシーで、ポークビーンズとサラダを添えればタンパク質や緑黄色野菜もとれます。
材料(2人前)
じゃがいも大2個、ポークビーンズ* 適量、サラダ 適量
作り方
①じゃがいもをよく洗い、皮付きのまま水からゆでる
②じゃがいもに十字の切れ込みを入れ、トースター等で焼き色をつける。
③ポークビーンズを適量加えて盛り付け、サラダを添えて出来上がり。
*ポークビーンズ(2人前)は、豚肉の細切れ(またはベーコン)100g、玉ねぎ小2分の1、にんじん8分の1をオリーブオイルで炒め、トマト缶2分の 1と固形コンソメ 1個を加え、水を切った大豆の水煮150gを加えて10分ほど煮立てれば出来上がります。
まとめ
じゃがいもについて、糖質の栄養素としての効果、じゃがいもを使ったダイエット中にも食べられるおすすめのレシピを紹介しました。
思ったほど糖質やカロリーも低く、ダイエット中にも一緒に食べるものや、食べる時間を工夫すれば食べてもよい食材ですね。
身近な根菜であるじゃがいもを上手に使って、ヘルシーな食生活を送りましょう。
(TOP写真提供 =ClarkDouglas / Unsplash.com)
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