「真のダイバーシティ」の実現へ。日本ブラインドサッカー協会とトーコンのパートナーシップ

株式会社トーコンが日本ブラインドサッカー協会のパートナーになったのは2019年。その出会いは、偶然であり必然であったといえるかもしれない。単純に金銭的なサポートをする関係ではなく、協会とパートナーがお互いを活用し合うという、まさに「パートナー」と呼ぶに相応しい関係性を築いている。日本ブラインドサッカー協会(JBFA)専務理事兼事務局長 松崎英吾氏と株式会社トーコン代表取締役社長 堀川教行氏に聞いた。

「世の中のバイアスを取り除く」という共通課題

株式会社トーコンは2019年2月よりJBFAとパートナーシップ契約を結んでいる。写真提供=鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会

現在、スポーツ団体を企業がサポートするということは、さまざまな競技で見受けられるごく一般的な図式だ。多くのスポーツが企業の援助を受けて環境を整え、企業の支援は競技の発展に寄与している。企業側も、スポーツの人気によって自社や扱う商品のイメージアップを図っている。そこには、お互いにメリットを見出しているからこその支援関係が成り立っている。

日本ブラインドサッカー協会と株式会社トーコンは、どのような出会いでパートナー契約を結ぶことになったのか。トーコンの堀川氏は次のように話す。

「当社は、企業の人材と集客を中心とした課題解決に取り組んでいます。主に従業員の採用や成長支援、評価制度構築などの組織支援、また集客の領域から事業支援にも領域を広げています。我々と日本ブラインドサッカー協会との出会いは、ある人事系専門雑誌で松崎さんの記事を目にしたことが、すべての始まりでした。

その時の記事のテーマは『無意識バイアス』についてだと記憶しています。単純に、どうして無意識バイアスとブラインドサッカーが関係するのだろうという純粋な興味で記事に目を止めました。読み進めていく中で無意識バイアスにより起こる組織の問題、それを解決できるというブラインドサッカーを使った研修そのものにとても興味を持ったんです。すぐに連絡を取りました」(堀川氏)

出会いは偶然だったということだ。そこから、パートナー契約に至るまでのスピードはかなり速かったと松崎氏は言う。「異例のスピードで協業の提案に至りましたが、それはあくまで課題感が共有できたからに他なりません」(松崎氏)

日本ブラインドサッカー協会は、ブラインドサッカーの国内統括団体でありながら、障がいを超えた共生社会の実現を目指す組織でもある。

「私たちのミッションは『視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会の実現』というものです。ブラインドサッカーの日本代表などの強化や競技の裾野を広げる活動だけではなく、企業や学校に対しブラインドサッカーを題材にした体験プログラムを提供し、コミュニケーションやチームワークの本質を理解してもらうという取り組みを行っています」(松崎氏)

中小企業の課題を解決していく

株式会社トーコン 代表取締役社長 堀川教行氏

偶然の出会いが、どのようにして必然の関係性を築くことになったのだろうか。

「株式会社トーコンは現在58期を迎えていて、業界では古株です。社員は全国200名ほどいるのですがその約7割は女性です。社員の年齢層も幅広く、20〜75歳までが現役として働いています。多様性・ダイバーシティという点では先進性のある会社だと思っています。

ただ、当社のクライアントの多くは中小企業で、ダイバーシティについて本格的に取り組めているところは少数です。人手不足など人材に関する課題を抱えていながらも、~だろう、~すべきなど、様々な固定概念に縛られている中小企業は非常に多い。

一方で、求職者の側でも情報が溢れる中で『こういう会社はブラック企業だ』など固定概念がある。人材を求める方にも仕事を探している方にもいくつもの“バイアス”があります。それを打破すれば双方の可能性が広がると考えていました」(堀川氏)

「弊会は、いくつかのパートナーシップやスポンサーシップをいただいています。しかし、その多くは大企業からの支援で、中小企業とのお付き合いはまだ発展途上なんです。実際の障がい者雇用は中小企業に支えられるような事実があるなか、そこに課題を抱えていました。その課題に取り組むには、中小企業のリアルな姿を知ることが欠かせないので、トーコン様との連携には大きなメリットがあると思ったのです」(松崎氏)

自分自身にも「無意識バイアス」が

実際にブラインドサッカーを観戦した堀川氏は大いに驚き、同時に、自分自身にも無意識バイアスが存在していることを悟ったという。

「初めてブラインドサッカーを生で観て、衝撃を受けました。身体のぶつかり合いがとてつもなく激しいんです。すごいなと感じるとともに、恐怖感も覚えました。自分が、目隠しをして30メートルを全力でダッシュしろと言われてもできません。

でも、彼らはそういう世界で生きているわけです。自分のなかで『見えない=弱い』という図式を作ってしまっていて、障がいを持っている人を“守ってあげなくてはいけない存在”と勝手に決めつけてしまっていたんです」と、堀川氏は自らの気付きを明かしてくれた。

そこには、日本の社会システムが影響していると松崎氏は指摘する。

「日本の国民の7%ほどは障がい者であるといわれています(※)。これは、日本の名字ランキング1位から7位である佐藤、鈴木、高橋、田中、伊藤、渡辺、山本を合わせた数にほぼ匹敵します。これらの名字の人は、みなさんの知人の中に何人もいると思います。しかし、障がい者と知り合いだという人はまだまだ少ないのではないでしょうか?これは、子供の頃から健常者と障がい者を分けて教育し、大人になってからも分けて管理しているからに他なりません」(松崎氏)

「社会の中に、健常者と障がい者の断絶があることは、理解しておく必要があると思います。当社は、ブラインドサッカーの日本代表強化指定である日向賢(ひなた・さとる)選手を社員として採用しました。その面接のときに『堀川さんって背が高いんですね』といわれてビックリしたんです。なぜわかるのか問うと、声が上の方から聞こえるからという答えが返ってきて、さらに驚きました。自分とは情報の捉え方が違うのだなと」(堀川氏)

同じ空間にいることで多くの気付きが生まれる

日本ブラインドサッカー協会(JBFA)専務理事兼事務局長 松崎英吾氏

気付きは、一緒に働く社員にもあったようだ。堀川氏は、健常者と障がい者が同じ空間で働くことに意味があるのだと強調する。

「それまでいくら社員にオフィスの整理整頓を指示してもなかなか動いてくれなかったのに、『日向くんのために』と伝えただけで、一切の荷物が床から消えたんです(笑)。ちなみに、彼に対しての社員としての評価は、他の人たちと同じ基準で行っています。障がい者だからという“ゲタ”を履かせることはしません、時にシビアな評価を下すこともありました。

『ダイバーシティ』をただのお題目にして、全て多様性だから許すという扱い方では本質を見失ってしまうと思います。社員はみな平等に、会社のミッションに貢献していかなければならないので、その軸は変わりません」(堀川氏)

しかしながら、トーコンのように健常者と障がい者を同列に扱うということは、そう容易なことではないと松崎氏はいう。

「残念なことですが、多くの企業が障がい者を雇用するモチベーションとしてもっとも大きなものは、障害者雇用率の達成です。これをクリアしないと、社名の公表などの行政指導がなされるので、それを回避したいという相談が私のところにも持ち込まれます。

かつて、視覚障がい者といえば、あん摩マッサージ指圧師になるのが一般的という時代もありました。そうやって社会が彼らの道筋を決めてしまっているという側面もあります。テクノロジーも進歩しているので、視覚障がい者であっても、パソコンの読み上げ機能を使ってWordやExcelを使いこなす人もいれば、SNSをやっている人もいます。職業の選択肢は広がってきています。

トーコンのように、障がい者自身にどんなキャリアを築いていきたいかを問い、そこにミッションを与えるということは、お互いにチャレンジしているわけで、とても貴重なことだと思っています」(松崎氏)

ビジネスの効率だけを追求するなら、健常者と障がい者の扱いを分けるほうが容易だが、なぜトーコンはあえて困難な道を選ぶのか?

「私は、常日頃から社員には『安易な選択からは安易な答えしか出ない』と伝えています。私たちのような中小企業が生き残っていくには、創意工夫が欠かせません。大企業では思いつかないようなアイデアや、思い切った取り組みなどが将来を切り開いていきます。

もしトーコンで障がい者が成功を収めたら、どんどん優秀な障がい者たちが集まってきてくれるかもしれない。そうなると、もともといた社員たちに刺激を与えて、『自分たちだってもっとがんばれるはず!』と思ってくれるかもしれません。遠回りしているようで、実は中長期的な視点での挑戦でもあるんです」(堀川氏)

「ダイバーシティ」というのは、多様性を認め、企業力に変換していくことだ。それぞれの個性を認め合い、その上で共に挑戦し、より良い社会を目指していく。健常者と障がい者の間には、大きな違いがある。しかし、それを認め合い、その違いを活かすことができれば、価値観の違いや性格の違い、大事にしているものの違いなど、個人個人が持っている小さな違いすらもチャンスと捉えられるようになっていく。

「真のパートナーシップ」を構築していく

JBFAとトーコンは「真のパートナー」として歩んでいくという

今後の日本ブラインドサッカー協会と株式会社トーコンの関係性は、どのように発展していくのだろうか?松崎氏は、協会の課題は「スポンサードの形」にあるという。

「実は、私たちの協会としては、これまで一方的なスポンサードはうまくいかなかったことが多いんです。そういった意味では、トーコン様とはパートナーとして、当協会の研修を共同でセールスするなどの取り組みが行われているので、とても有意義だと思っています。私たちにとっては、中小企業のリアルを知ることで今後はどのようにアプローチしていけばいいかという解像度を上げていくことができ、新しいサービスなどを考えていけます」(松崎氏)

それに対し堀川氏も、「私たちは、日本ブラインドサッカー協会の研修プログラムの認知向上に取り組んでいきたいと思っています。日本には400万社以上の企業があるといわれていますが、そのうちの99%が中小企業で、雇用者の数でいえば約7割の人が中小企業で働いているわけです。ここにアプローチして、制度や意識を変えていけば、社会全体の変革にもつながっていきやすいと思うんです」と、協会と共同でアクセスしていくことの価値を十二分に感じているようだ。

「トーコンは、お客様である中小企業にセールスする前に、自社で取り入れてみることもとても大事にしていますよね。これは素晴らしいことです。自社でどんな変化が起きたかを実体験しているからこそ説得力を持ってクライアントにセールスできるし、その変化から新しいサービスにつなげていくこともできます」(松崎氏)

「当社のモットーは『言行一致』『率先垂範』なので、そこを大切にして、今後も活動していきたいと思っています」(堀川氏)

偶然の出会いが、世の中のバイアスを打破していくという課題によって必然に変わっていった。障がい者支援というテーマに取り組むことが、本当の意味でのダイバーシティを実現させるためにつながっていく。お互いの強みを活かしながら、パートナーシップは深まっていくようだ。

内閣府資料では、身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、各区分における障害者数の概数は、身体障害者(身体障害児を含む)436万人、知的障害者(知的障害児を含む)108万2千人、精神障害者419万3千人となっている。これを人口千人当たりの人数でみると、身体障害者は34人、知的障害者は9人、精神障害者は33人となる。複数の障害を併せ持つ者もいるため単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.6%が何らかの障害を有していることになる。

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