スポーツとSDGs 〜スポーツ界のSDGsへの取り組みについて

2020年にプロスポーツとSDGsについて調べたところ、一般のSDGs関する認知度は低く、プロスポーツの取り組みも緒についたところでした。ところがここ数年で一般向けのポスターやテレビCMでの取り上げが増え、2022年の現在、事前に「SDGsは何か」を説明することなしに会話できるくらい一般の認知度が高まって来たことを肌で感じています。

 ただし、そうは言ってもSDGsとはなに?という方もおられるかと思いますので、まずは簡単に説明して、スポーツ界でのSDGsの取り組みについて紹介していきましょう。

 ・そもそもSDGsとはなに?

 SDGs とは、2015年の国連サミットですべての加盟国が合意した、2030年を達成年限とした「持続可能な開発目標」のことを言います。

SDGs は、2001年から始まったMDジーズの発展形であり、MDジーズが主として開発途上国向けの目標で8ゴール21ターゲットでスタートしたのと比較すると、SDGs は先進国も含めすべての国が取り組むべき目標となり、17ゴール169ターゲットと細かく細分化された目標になっています。

 またここで重要なのは、「誰一人取り残さない」という理念で、人間ひとりひとりの行動に目標達成の鍵が委ねられているという点です。

スポーツSDGsってなに?

スポーツSDGsとは

SDGsの活動をスポーツ活動に関連付けて取り組む試みを言います。スポーツは、団体競技であっても個人競技であっても、一個人の活動が基本になっています。スポーツの活動をSDGsのゴールに当てはめてみましょう。

 SDGsのゴールから見るスポーツとの関係

17ゴール全てにおいてスポーツに関連付けることは可能です。中でも特に以下の6ゴールは私たちに身近で注目したい目標です。ひとつずつ見て行きましょう。

 ①ゴール3  (すべての人に健康と福祉を)

スポーツとSDGsの関係をイメージしやすく、最も分かりやすいゴールです。スポーツは競争や記録だけが目標でなく、広く個々人が健康的に生活できることが目標になります。スポーツを行うことで運動不足による非感染性疾患の減少や、スポーツをツールにして性や生殖、出生について考えることが期待されています。

 「持続可能性」という観点からは、スポーツには「生涯スポーツ」という考え方があります。人生100年時代になり、定年後にスポーツを始める方も多くいるでしょう。スポーツを始めるのに遅すぎることはありませんので、ご自分に合ったスポーツを見つけて取り組むことは生きがいにもなりますし、健康年齢を伸ばし自立した生活を送ることにもつながります。

②ゴール8 (働きがいも経済成長も)

高度成長期の日本にあったような「仕事が趣味」といった時代は終わり、先進国では少子高齢化の安定期に入った時代では、「ワーク・ライフ・バランス」に代表されるように、家事と仕事、仕事と余暇のバランスが求められています。労働者側では、自己実現や働きがいを求めての労働という考え方も広がってきました。平日は仕事、週末は好きなスポーツで気分転換をしながら日々の活動を行うことは、スポーツの語源となった「DIS(離す)+PORT(運ぶ)」、仕事から離れ、心を仕事以外のところに運ぶという意味にふさわしい活動となります。

 最近では特に開発途上国で生産されたスポーツ用品が目立ちます。以前は低価格であっても品質が悪く、購入を控えていた感がありましたが、近年では徹底した品質管理によって品質が向上しています。これらのスポーツ用品を購入し使い、製造した国の人々の雇用を考えつつスポーツをすることは、身近にSDGsを考えるきっかけになるでしょう。

③ゴール11 (住み続けられるまちづくりを)

スポーツを続けるには身近にスポーツできる環境があるとよいですね。自らスポーツできる環境を作ることも大切です。都市圏では公共のスポーツ施設や学校などの施設を利用してのスポーツ教室などが開催されています。それらも利用しながらスポーツを続けられる環境を作ってみましょう。

 文科省・スポーツ庁の進める、総合型地域スポーツクラブを中心とした地域スポーツ環境の整備には、中学校の通学圏内に1つのスポーツクラブを設置することが構想されています。学校施設については市民の大切な資産であるにもかかわらず、今なお開放が進んでいない部分があります。学校施設の有効活用をまちづくり構想に含めて、スポーツ環境の改善に工夫を重ねて欲しいです。

 ④ゴール12 (つくる責任 つかう責任)

モノが豊かになりスポーツ用品についても使い捨ての感覚が定着しています。野球のグラブやテニスのラケットなど、材質がよくなり長く使えるようになりましたが、一方で昔に比べ比較的安価に手に入るようになったからでしょうか、再利用しよう、廃棄物を減らそうという活動はあまり聞こえてきません。

 廃棄されるテニスボールを回収し、学校の椅子や机に履かせることで消音に役立てる活動を日本プロテニス協会が地道に行っています。かつてはNPO法人のGSAが行っていた活動を2019年から引き継いだものです。また、野球のグラブを修理・再生してリサイクルを行っているグローバルポーターズという会社もあります。資源の有効活用の観点から、リユースやリサイクルはもっと見直して欲しい考え方です。

 ⑤ゴール14 (海の豊かさを守ろう)

廃棄プラスチックが環境に悪影響を及ぼしていることは、多くの団体のレポートにより一般常識になっています。レジ袋やペットボトルの利用は人類に多大な便利さをもたらしながら、一方で廃棄物の多量発生と投棄という世界的な問題を引き起こしています。多少不便でも再利用の考え方をスポーツに取り入れてはいかがでしょうか。例えば、スポーツ観戦にマイボトルを持参することで、廃棄プラスチックを減らせる取り組みができます。

 企業としてのアディダスの取り組み「Run  for the  Oceans」は、参加者がランニングアプリを使って走ることで、走った距離を計測し距離に応じて企業が海のプラスティック廃棄物を回収、廃棄物をリサイクルすることで新しいウェアを製造、そのウェアを購入した人がまた走る、という循環で「END PLASTIC WASTE(プラスチックの無駄使いをやめよう)」やSDGsに取り組もうという活動です。こういった活動もSDGsを身近に感じることができる取り組みと言えるでしょう。

⑥ゴール15 (陸の豊かさを守ろう)

陸上生態系の保全については、かつてはゴルフ場開発による森林の伐採や生態系の破壊、野球のバット用の木の乱獲による自然破壊などが言われましたが、その後各団体では生態系の保全と生物多様性の維持、植林活動などの対策が取られています。

日本では、硬くて強く、粘りがある特性を活かして、野球用のバットや木製ラケット、競技用スキー板の原料にアオダモの木が使われていました。特にイチロー選手などの、バットのしなりを活かしてボールを乗せて運ぶような好打者には好まれて使われてきました。ただし、天然アオダモは減り、計画的な植林がされてこなかったことから人工造林も下火となったことからアオダモは激減してしまいました。アオダモがバット材になるには70年以上の年数がかかります。2000年から行政、野球関係者、バット生産者が一体となり「NPOアオダモ資源育成の会」が発足し、募金・販売活動を伴う資源確保の取り組み、および木製折損バットのリサイクル活動などが行われています。

スポーツとSDGsをかけあわせるメリットとは

写真提供 =Gavin Vallet / Unsplash.com

「持続可能な開発のための2030アジェンダ宣言」では、スポーツが社会の進歩に果たす役割を次のように説明しています。

 「スポーツもまた、持続可能な開発における重要な鍵となるものである。我々は、スポーツが寛容性と尊厳を促進することによる、開発及び平和への寄与、また、健康、教育、社会包摂的目標への貢献と同様、女性や若者、個人やコミュニティの能力強化に寄与することを認識する。」

 従来でもCSR(企業の社会的責任)や、社会貢献といった活動があり、今も継続中です。ただし、SDGsが今までと違うのは、国や業種をまたいだ共通言語となっていること、加えて、企業が中心であったCSRの活動と違い、ひとりひとりの個人が活動を起こすような仕組みになっていることです。

 スポーツ種目は、オリンピックに代表されるように、国民ひとりひとりの日々の運動が基本となって能力を競い合います。スポーツとSDGsを組み合わせることで、SDGs達成への取り組みが、個人の草の根活動から始まって、社会貢献や、新しい事業の創出、企業ブランドの向上等に寄与する、という動きがスポーツ団体やスポーツ関連企業にも認知されるようになって来て、スポーツに関わる個人と企業・団体の双方から取り組まれ大きなムーブメントになる可能性を秘めています。

スポーツSDGs・これからの発展は

SDGsのようなボランティア的な活動は、若い世代の方が身近に感じ、行動に移しやすいかもしれません。また「SDGsの活動をやろう」と構えるのではなく、日常の活動がSDGsにどう結びつくのかなと考えていくと、より取り組みやすいでしょう。

 スポーツ活動におけるSDGsについては、これからも色々なスポーツ種目で、その特性に合わせてますます注目され取り組まれていくことでしょうが、参加者はそこから利益や報酬を期待するのではなく、無償の活動として身近なことから参加する、というスタンスであればますます発展していくことと考えます。

まとめ

スポーツはそもそも、オリンピックに代表されるようにアマチュアの技量の競い合う場であったはずが、コマーシャリズムの台頭により営利目的の活動に変貌してきました。

 本来のスポーツの目的を取り戻すためにも、SDGsのような草の根のボランティア活動がスポーツ活動に組み込まれ、地球の持続性を助ける活動になることは意義あることだと感じます。

 日頃の情報に敏感になり、引き続きスポーツとSDGsの活動に注目していきましょう。

(TOP写真提供 = Ben White  / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

スポーツと持続可能な開発 (国際連合広報センターHP)

SDGs 17ゴール解説(夢ナビ)

アオダモ資源育成の会 (アオダモ資源育成の会HP)

社会貢献活動/ボールリユース活動 (JPTAHP)

RUN FOR THE OCEANS (アディダスHP)

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