テニスの名言 ~日本選手とグランドスラマーの言葉を中心に紹介

一流のスポーツ選手の発する言葉には、日々の練習と試合の厳しい環境の中で得られ、洗練された哲学のようなものが、現れています。発言した時代や環境によって意味合いは変化するかもしれませんが、できる限り普遍的な言葉を選んでみました。

ぜひ参考にしてみてください。

日本人 テニス選手の名言

世界と戦ってきた、4人の日本人選手の言葉をご紹介します。

 錦織圭

 「ランキング何位とか、プレッシャーとかと戦うっていうよりかは自分自身の限界を目指せばいい。」

数々の日本人テニス選手の歴代記録を書き換えてきた日本の代表選手。2014年全米オープン単準優勝。ATP世界ランキング自己最高位は4位。

錦織選手は、普段からこういうものの考え方をしているようです。これは性格的なものなのか、経験から来たものかは分かりません。ランキングのアップダウンの中で戦う厳しい世界で、メンタルのバーンアウト(燃え尽き症候群)を防ぐためにも大切な考え方でしょう。

「自分ができることを模索して考えることに意味がある。」

テニスは相手があっての試合ですので、自分が準備できる部分には限界があります。自分のできる中でいろいろ考えを巡らせて、策を考えることは重要です。元プロ野球NYヤンキースの松井秀喜選手も、かつて同様の内容の発言をしていました。

松岡修造

錦織選手が出てくるまでは、日本人テニス選手のトッププレーヤーでした。ご自分でも言っているように、自分に才能があったとすれば、努力する才能があったとのこと。その努力で1995年ウィンブルドンベスト8の成績を残しました。

「この一球は、絶対無二の一球なり。」

ウィンブルドンベスト8になった試合中に、松岡選手が発した言葉です。この言葉は、福田雅之助氏がかつて早稲田大学庭球部員に残した、テニスをプレーする上での心構え「庭球訓」にある一節です。

「勝敗を分けるのはいつでもたった一球だ。だが、プレーをしているときは、どれがその一球か分からない。」

上の言葉に通じる考えです。試合の中での大事な一球は、いつ来るか分かりません。どの一球にも、常に集中して挑むことが大切だと説いています。

伊達公子

大坂選手が出てくるまでは、日本人女子選手の最高の成績を残していたレジェンドです。WTA自己最高位4位。1996年ウィンブルドン女子単準決勝での、当時トップだったシュテフィ・グラフ選手との2日に亘るフルセットの死闘は今でも語り継がれています。2017年に現役引退。

「自分より上のトップの選手と試合をすると、自分を引き上げてくれるものが出てくる。」

現役時代90年代の初め、伊達選手は同じラケットメーカー所属のレジェンド、マルチナ・ナブラチロワ選手と練習試合を多く行っていました。この経験から、自分の立ち位置を知り、努力することで後の活躍に結びついていったのでしょう。

「チャレンジする気持ちを失っていないことが、戦い続けていられる一番大きな理由です。」

伊達選手は1996年に一度、現役を引退しています。まだ十分活躍できる年齢での引退でした。その後結婚し、普通の生活をしていましたが、チャレンジする気持ちが忘れられず、2008年に現役に復帰。2011年にはウィンブルドンのセンターコートで、ヴィーナス・ウィリアムズ選手と熱戦を繰り広げました。

大坂なおみ

「両親はいつも『勝ち負けを気にすることはない』と言い続けてくれました。楽しむことが何よりも大切だと教えてくれた。」

伊達選手の2度目の引退に合わせるように頭角を表し、2018年の全米オープン大会で日本人初の優勝を果たしました。さらに2019年に全豪オープン、2020年には全豪・全米を優勝し、これからも活躍が期待されます。男女通じてアジア初の世界ランキング1位。

「何度も口に出したほうが、達成するのは簡単になる。」

「どんな展開になっても、トップまで上りつめる選手は落ち着いているんだなと分かったんです。」

一流のスポーツ選手は、目標が明確で、それに対する努力を怠りません。試合中のメンタルテクニックのひとつに、ポジティヴな言葉を口に出すスキルがあります。

試合中のどんな状況でも冷静でいられることがトップのメンタルの極意でしょう。

海外選手の名言

写真提供 = Shep McAllister / Unsplash.com

テニスはフランスで発祥し、その後イギリスでルール化され、世界に広がりました。ここからは、海外選手の言葉をご紹介します。

ロジャー・フェデラー

スイス出身で、年齢を感じさせない、攻撃型のテニスを持ち味とするテニス界のレジェンドプレーヤーです。当時、圧倒的な強さだったサンプラス選手を引き継ぎ、「芝の王者」となりました。2001年のサンプラス選手に勝ったウィンブルドン4回戦が、時代が変わるポイントとして印象的でした。グランドスラム単優勝現在20回。

 「私はすごく前向きです。この前向きさが困難な状況で一番私を救ってくれたものなのです。」

攻撃的なテニスが信条。テニスのスリリングな楽しさを観客に魅せてくれる選手です。

 「努力に逃げ道はないから、努力を愛すしかありません。」

「天才の道を行くべきか、それとも努力の道を行くか考えていたのですが、結局、私は努力の道を選びました。」

天才でも努力する、という好例です。才能だけでは一流になれない、ましてやその地位をキープできません。

 「重要な人間になるのは素晴らしいことですが、素晴らしい人間になることの方が重要です。」

よく引用される言葉です。テニス界で大変重要な人物であるフェデラー選手の言葉には、説得力があります。

「日本には国枝がいるじゃないか!」

2007年、日本人記者の「なぜ日本のテニス界から世界的な選手が出ないのか?」との質問への答え。この時期、日本のテニス界が低迷していた頃でしたが、車いすテニスの国枝慎吾選手は、初の年間グランドスラムを達成して絶好調でした。このフェデラー選手の言葉には、記者の方もハッとさせられたのではないでしょうか。

マイケル・チャン

台湾系のアメリカ人で、アジアにルーツを持つ選手として初めてのグランドスラム単優勝者です(1989年全仏)。現在は錦織圭選手のコーチを務めています。

 「飲み込みが早いこともあれば、そうではないこともあります。個性は違うし、一人のプレーヤーに当てはまることが他のプレーヤーには当てはまらないこともあります。」

コーチとして大切な言葉です。錦織選手とクレバーなチャンコーチはグッドパートナーだと思います。

「勝ったときには謙虚さを、負けたときには潔さを身につければよい。」

勝負をする人全てに身につけて欲しい言葉です。

 「勝ちにこだわり過ぎていたことが分かってから、テニスが易しくなった。」

前述の錦織選手の言葉も、チャンコーチの哲学の影響がありそうです。

ジョン・マッケンロー

1980年代のアメリカを代表する選手。シングルスでもダブルスでも世界1位になった、数少ない選手の1人。天才型のタッチの良いテニスで観客を魅了する一方、試合中によく審判とトラブルを起こすことから「悪童」と呼ばれました。1980年のウィンブルドン単決勝でのボルグとの死闘は、映画にもなりました。グランドスラム単優勝7回、複優勝9回。

「僕の一番の強みは弱点がないことです。」

基本的な戦略はサーブからのネットプレーですが、ストロークでも自由自在に打ち分け、弱点のない選手でした。ダブルスでも好成績を残しているところにも表れています。

ビョルン・ボルグ

マッケンロー選手との1980年の死闘を制してウィンブルドン5連覇を達成、翌年にはマッケンロー選手との対戦で敗れ、6連覇を阻まれました。

「氷のボルグ」「アイス・マン」と称され、冷静な試合運びが印象的な選手でした。強烈なトップスピンを使うプレースタイルから、「現代テニスの父」と呼ばれています。グランドスラム単優勝11回。

「自分で見つけないと。誰も君のために見つけてはくれない。」

ボルグ選手の代名詞である「トップスピン」は自己流で編み出しました。バックハンドの両手打ちもラケットが重かったので、アイスホッケーのスラップショットの打ち方でした。コーチたちは変えさせようとしたのですが、頑固に拒み続けました。自分に合うと思ったなら、貫く信念も大切です。

ロッド・レーバー

テニスの歴史には必ずと言ってもいいほど出てくるオーストラリアのレジェンドです。年間グランドスラムを2度達成した選手は、レーバー選手ただ1人。動きが速く「ロケット」と呼ばれました。グランドスラム単優勝11回。多くの貴重な言葉を残しています。

 「テニスはプレッシャーのゲームです。目的は相手がエラーをしやすいようプレッシャーをかけ続け、自分をプレッシャーから遠ざけ続けることです。」

「試合で最重要の事実があります。あなたはあなたであり、自分自身を知ることです。」

 「次のポイント、君が考えることはそれだけです。」

「直前のポイントは変えられません。忘れて次のポイントに勝ちましょう。」

テニスという競技は1ポイントの積み重ねで、前のポイントの失敗を引きずっていては、良い結果は得られません。気持ちの切り替えが大切です。

ヴィーナス・ウィリアムズ

アメリカ出身で、1990年代の女子テニスにパワーテニスを持ち込み、妹のセリーナと共にテニススタイルを一変させました。グランドスラム単7勝、セリーナと組んで複14勝。

 「自分なら必ず、絶対にできると信じよう。くじけそうになった時でも、常に自分が目標を達成している成功した状態をイメージし続けよう。周りの人が何と言おうが、自分が本当に信じたことは必ず実現できます。」

成功をイメージするというのは大切なことです。一流選手と呼ばれる選手たちは、ジュニアの時から目標が明確なことが多いです。

マルチナ・ナブラチロワ

チェコ出身の選手で、グランドスラムの単優勝は18回、うちウィンブルドン単優勝9回は歴代1位。ダブルスでも31回、混合でも10回の優勝を誇ります。クリス・エバート選手とのライバル関係は有名で、女子テニスを牽引しました。

 「勝利の瞬間は、それだけのために生きるにはあまりにも短すぎます。」

 「テニスは私に魂を与えてくれました。」

政情不安なチェコからの亡命があり、テニスこそが才能豊かな彼女の拠り所でした。

イボンヌ・グーラゴン

オーストラリアの原住民・アボリジニの家庭に生まれ、グランドスラム大会シングルスを7度優勝したレジェンド。ナブラチロワ、エバートらとライバル関係にありました。

「夢があるのならその夢を達成するために努力しなければいけません。若い時の夢はあなたを前進させ続ける力になり得るのだから。」

貧しい家庭に生まれながら、才能を開花させ、グランドスラム7勝の偉業を成し遂げた選手の言葉は重いです。

ビリー・ジーン・キング

女子テニス協会(WTA)を設立し、女子テニス界のシステムを変革した人としても有名なレジェンドです。グランドスラム単優勝12勝、複優勝16勝、混合優勝11勝。

「チャンピオンは負けることを恐れます。そうでない人は勝つことを恐れます。」

「勝ちビビり」という言葉があるように、勝利を目の前にするとテニスが変わってしまう選手が多いです。チャンピオンは勝つことを怖れません。

「きちんと決着をつけるまでプレイし続けるのがチャンピオンです。」

最後の1ポイントを取るまで油断するな、とはテニスでよく言われる言葉です。

「チャンピオンになるために一番重要なことは自己認識ではないかと思います。」

レーバー選手の言葉にもありましたが、試合においては自分のできることを知ることは大切なことでしょう。

まとめ

本記事では、テニスの名選手たちの言葉をご紹介しました。他のスポーツ選手たちにも共通なのは、陰ながらの練習と努力は大切ということです。

また、自信を持つこと、ジュニアの時代から明確な目標を立てることは、意志の力を利用する上でも大切です。

紹介した言葉はほんの一部ですので、興味を持った言葉や選手がありましたら、さらに調べてみると楽しいでしょう。

(TOP写真提供 = Renith R / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

プロテニス選手の名言、まとめ。メンタルが弱った時に心に響く言葉たち。(テニテニ通信)

『The Tennis Lover’s Book of Wisdom』(C.Freeman 編、Walnut Grove出版)