健康に長生きするためには、病気になってからなんとかするのではなく、病気にならないように予防する「ヘルスケア」が大事です。
ヘルスケアには、食事や運動などのさまざまな要素が関わってきますが、その中心となるのはやはり医療です。
この記事では、医療を支えるヘルスケアメーカーについて説明していきます。また、注目のヘルスケア技術についても紹介します。
そもそもヘルスケアとは?私たちへの関わりを解説
「ヘルスケア」は、日本語にすると「健康管理」という意味になります。ヘルスケアと似た言葉に「セルフメディケーション」がありますが、こちらは「自己治療」という意味になります。
セルフメディケーションは、自分で「薬」を買うなどして、医師に頼りすぎずに健康を守る行為です。
しかしセルフケアが示す範囲はもっと広く、医療行為だけでなく、「食べ物」を吟味したり、「運動」をしたり、ストレス解消のため「旅行」に行ったり、とさまざまな分野を通じて病気や怪我の「予防」をするという意味があります。
・ヘルスケアの意義
ヘルスケアをおこなうことにより、病気や怪我をしてしまう可能性を減らすことができます。医師にかかる機会を減らせるため、総合的には、健康維持に関する費用を減らすことができるようになります。
また、社会的に見ても、逼迫する国の医療支出を抑える効果があります。患者が多すぎて、過酷な労働を強いられている医師の負担を減らすことにもつながります。
ヘルスケアメーカー・それぞれの特徴は…
ヘルスケアは医療だけでなく、食品会社、スポーツジム、旅行会社など多くの業界が関係しています。しかし「ヘルスケアメーカー」と言う場合は、「医療機器」を製造販売している会社を意味するのが普通です。
日本のヘルスケアメーカーの市場規模は2~3兆円で、全世界の8%程度のシェアとなっています。医療機器で日本が高いシェアを持つ分野は少なく、シェアが50%を超えるているのは2017年の段階で、「内視鏡」「医療用光源」「眼底カメラ」の3つのみです。
日本のヘルスケアメーカーとしては、次の4社が有名です。
- オリンパス
- テルモ
- ニプロ
- シスメックス
では、日本のヘルスケアメーカーの特徴について、詳しく見ていきましょう。
・オリンパス
「オリンパス」は、実用可能な「胃カメラ」を世界で初めて開発した会社です。その流れで内視鏡事業は、今でもオリンパスの主力となっています。
実際にオリンパスの2021年の売上は約7,300億円ですが、そのうちの4,200億円ほどが内視鏡事業となっています。その他の治療機器事業が2,000億円程度で、売上全体の8割以上が医療事業となっています。
オリンパスがカメラや双眼鏡を扱っている会社だと思っている人もいるかもしれませんが、2021年以降は、映像事業は別会社に移管され、オリンパスでは取り扱われていません。
・テルモ
「テルモ」は、1921年に北里柴三郎博士を中心とした医師が発起人として設立された会社です。
テルモには、心臓と肺を主にした「血管」の治療に関わる「心臓血管カンパニー」、患者のケアの質を向上させる「メディカルケアソリューションズカンパニー」、輸血医療を支える「血液細胞テクノロジーカンパニー」の3つのカンパニーがあり、世界160カ国以上で活動しています。
・ニプロ
「ニプロ」は、透析や人工臓器を主にした医療機器の販売をしている会社です。また、注射剤、経口剤、外用剤などのさまざまな医薬品の製造と販売も手掛けています。
他にニプロは、医療現場を支える「ファーマパッケージング事業」もおこなっています。バイアルやアンプルに使う「ガラス製品」や医療用の「ゴム栓」などを製造しています。
・シスメックス
「シスメックス」は、1963年に国内で初の自動血球計数装置「CC-1001」の実用化に成功した会社です。その流れで現在も、血液検査や尿検査、免疫検査などに使う医療機器の製造と販売に強みを持っています。
またシスメックスの技術は、水族館といった意外なところでも活用されています。アザラシなどの健康を管理する「動物用検査機器」も取り扱っているのです。
成長し続けるヘルスケアメーカー・進化した注目製品をご紹介!
ヘルスケアメーカーは、需要の高まりとともに、急速に技術が向上しています。次のような分野で、新しい製品が次々と開発されています。
- 遠隔医療サービス
- AI画像診断
- ウェアラブル&ヘルストラッキング
- 自宅検査サービス
では、詳しく見ていきましょう。
・遠隔医療サービス
日本では、新型コロナの感染症予防のために、2020年から「オンライン診療」ができるようになりました。世界的にも、オンライン診療のニーズは増えてきています。
「MDBox」は、ビデオチャットを使った遠隔診断サービスです。専用のアプリを使って、ネット上から医師に相談ができます。これはアメリカで使われているサービスで、高額な医療費に二の足を踏んでいる人たちからの需要が増えています。
・AI画像診断
AI技術はさまざまな分野で利用されていますが、医療の分野でも活用されてきています。多数のデータを蓄積したAIで画像を解析し、いち早く病巣を発見する、といった使い方がされています。
「Viz.ai」は、脳の画像を解析する診断プラットフォームです。Viz.aiを使えば、救急車の中で脳をスキャンして、病院に情報を送信し、搬入後即座に適切な治療ができるようにする、といったこともできるようになります。
・ウェアラブル&ヘルストラッキング
健康状態の管理を目的としたウェアラブル&ヘルストラッキングも、発展が著しい分野です。特に有名なのは「Apple Watch」ですが、その他にもさまざまな製品が製造されています。
少し珍しいヘルストラッキングに「Siren」があります。これは靴下型のヘルストラッキングで、足の温度から体温の変化や炎症の予兆を検知します。Siren は、糖尿病患者の健康状態を測る機器として利用されています。
・自宅検査サービス
自分で健康状態を調べることができる「自宅検査サービス」も充実してきています。
「Vivoo」は、自宅で簡単にできる尿検査キットです。検査シートに尿をかけ、専用アプリでスキャンすると、尿のpH値やケトン体、肝機能の状態など、さまざまなことを確認できます。
まとめ
ヘルスケアは、健康管理を意味する言葉ですが、これは治療というより、病気や怪我をしないような「予防」が主になります。
ヘルスケアという言葉が含む範囲は広く、医療以外に、体に良い「食べ物」の選択、健康を増進させる「運動」、ストレスを解消する「旅行」なども、ヘルスケアの1つとなります。
長寿化が進んでいる現代では、ヘルスケアの需要は年々高くなっており、さまざまなヘルスケア関連技術が開発されています。
(TOP写真提供 = National Cancer institute / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
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医療機器・ヘルスケア開発協議会 002_01_02.pdf(METI/経済産業省)
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