高齢化率が年々高くなっている日本で注目を集めているのがヘルスケア産業です。
最近では医療や介護だけでなく、ITや生活支援などの分野に参入する企業も増えており、マーケットのさらなる成長が予測されています。
そこでここでは、ヘルスケア産業の市場規模や近年の傾向、注目される理由、そして今後の市場規模などについて解説していきます。
ヘルスケアの市場規模・近年の傾向は
まずは、ヘルスケア産業の市場規模と近年の傾向について説明します。
また、特に市場規模が大きい医薬品や医療機器業界の状況についても解説します。
・市場規模と近年の傾向
経済産業省の発表では、日本のヘルスケア産業の市場規模は2016年で約25兆円で、2013年の16兆円から大きく伸びています。また日本再興戦略によると、2025年には33兆円市場に成長すると予測されています。
このように近年は、マーケットの伸び率が高い傾向にあることがわかります。
理由は、高齢化にともなう医療費の高騰や介護サービスの拡大だけではありません。ジェネリック医薬品の急速な普及のほかロボットやAI、IoTなどテクノロジーとの組み合わせ、さらに企業間のM&Aなど、様々な要因があります。
これは日本だけでなく世界でも起きていることであり、ヘルスケア産業における海外の市場規模は2013年の163兆円から2020年の311兆円に成長するといわれています。
各種テクノロジーの導入で変化の時期を迎えているヘルスケア産業ですが、市場規模が大きいのは次の医薬品や医療機器業界です。
・医薬品業界の現況
医薬品業界は10兆円を超える市場規模で、今後も成長が予測されている業界です。
近年は新薬の開発にとどまらず、異業種企業と業務提携を結ぶことで健康管理アプリを開発したり保険商品を取り扱ったりするなど業務の幅が広がっています。
また薬による治療以外に、ロボット技術を使った身体機能の改善や医療機器の研究開発を行うなど多様性も目立っています。
・医療機器業界の現況
医療機器業界は約3兆円の市場規模があります。
成長産業ですが、医療機器は輸入が多く、また以前よりも高度な機能や技術が求められるようになっている課題もあります。
そのため医薬品業界と同様に、企業間の提携を積極的に進めるケースが増えています。
・幅広い企業の参入
医療は予防から診断、治療と各過程で高い専門性が必要で、各企業が参入しています。
治療には医薬品や医療機器業界が深く関係しますが、予防にはフィットネス事業やサプリメント開発なども含まれるため、ヘルスケア産業の裾野はたいへん広いです。
このように、近年はヘルスケア産業全体で多くの企業が参入し市場規模も拡大しています。
なぜヘルスケア市場が注目されるのか
次に、ヘルスケア市場が注目される理由について詳しく説明します。
・市場規模の大きさ
ヘルスケア市場が注目される大きな理由の1つが市場規模の大きさです。
2016年で約25兆円の市場規模があるヘルスケア産業ですが、細分化すると医療機器の約3兆円、医薬品の10兆円超以外にも、ドラッグストアは約8兆円あり、介護業界に至っては2025年には18兆円を超えると予測されています。
このような発展性のある巨大市場のため、参入に多くのメリットを見出している企業だけでなく政府や地方自治体からも注目されています。
・雇用の発生
ヘルスケア産業の各分野に様々な企業が参入することで、雇用も多く生まれています。
その結果、失業率の低下や地域経済の活性化、税収の増加など、個人から国レベルまで多くのメリットが発生しています。
・イノベーションの創出
ヘルスケア産業におけるイノベーションの創出は、創薬や再生医療だけでなくテクノロジーと組み合わせることでも生まれています。
例えば、アメリカの巨大IT企業群のGAFAがヘルスケア産業に参入しています。他にも、これまでヘルスケアとは接点を持っていなかった先端技術産業が次々と参入しています。
実際に、IT技術を用いたオンライン診療や電子カルテを導入している医療機関も少なくありません。AIやロボットの導入も進められています。
これまで一般的とされてきた診療形態が、より便利なシステムに変化し提供されているのです。
ヘルスケア産業が注目されることで、今後は新たなサービスなども増えていくと予想されています。
ヘルスケア市場規模のこれから
ヘルスケアの市場規模は、将来的にますます拡大していくといわれています。
ここでは、市場規模の予測値や拡大する理由、注目の分野について説明します。
・市場規模が拡大する成長産業
日本再興戦略によるとヘルスケア産業の市場規模は、2030年に日本では37兆円、海外では525兆円まで拡大すると予測されています。
ヘルスケア産業は、研究機関によっては、2040年に日本で100兆円規模までマーケットが大きくなると予想されているほどの成長産業です。
なお、世界のヘルスケア市場の成長率は年9%以上と高い伸び率が続いています。
このように、産業全体のマーケットが今後も伸び続けると予想されるのがヘルスケア業界の特徴です。
国内の市場規模が拡大する理由には、医療費の増大や政府の戦略などがあります。
医療費は2020年の約44兆円から2030年には約62兆円と、10年間で20兆円近く増大すると試算されています。
また、2013年には「日本再興戦略JAPAN is BACK」が閣議決定されました。
その中の決定事項に、健康寿命を伸ばす取り組みがあります。健康的な生活を送ることで病気を予防し、社会保障費の抑制や労働人口の確保につなげる狙いです。
さらに、ヘルスケアに関係する様々な業界の発展につながることから、市場規模のさらなる拡大や経済の活性化などに貢献すると期待されています。
・スマートヘルスケアの発展
スマートヘルスケアは、患者一人ひとりに適した治療を提供するために、遠隔医療やウェアラブル端末を使った健康管理などを行う分野です。
IoTやVRなどのテクノロジーを用いることで実現できるスマートヘルスケアは、2022年には3,000億円以上の市場規模になると予測されています。
日本再興戦略での取り組みの1つ、健康寿命の延伸では、ライフログデータの活用は欠かせません。そのためには、ウェアラブル端末を使ったスマートヘルスケアが便利です。
また国内の人口1,000人あたりの医師数は2016年で約2.4人と、ドイツの3.2人やカナダの4.2人と比べて少ない水準といえます。
このような医師数の少なさを補うためにも、オンラインでの診療ができる病院や診療所の増加は不可欠です。
2019年には約1,300の医療機関だけがオンライン診療に対応していました。しかし、2021年では約13倍の16,000以上まで増えており、今後ますます増えることが予測されています。
スマートヘルスケアでは、病気になる危険性を把握するための遺伝子検査を行うサービスも提供され始めています。しかしデータ量が膨大になるため、AI技術が不可欠になります。
さらに、2040年には要介護認定者が1,000万人に迫ると予想されているため、介護業界の人材を補うためにもAI技術が欠かせなくなるでしょう。
このように様々なテクノロジーが参入しているスマートヘルスケアは、今後さらなる発展が期待されています。
・新興国への参入
新興国の経済発展は近年めざましく、個人では所得が増える一方、生活習慣病の増加も問題になっています。その結果、医療費が増大し、国家の財政状況を悪化させる原因になっています。
ヘルスケア関連サービスが少ない新興国においては、参入するチャンスといえるでしょう。
例えば、ジェネリック医薬品を拡大させることで医療費を抑えることができます。病気を予防するためのサービスやウェアラブル端末の普及も考えられるでしょう。
日本政府はヘルスケア産業における国際競争力の強化も打ち出しているため、新興国へ参入しやすい環境が整えられているといえます。
まとめ
高齢化や医療費の増大、健康寿命を伸ばす国の政策などで、ヘルスケア産業の市場規模は拡大を続けると予測されています。
また、異業種からの参入も多く新興国での事業拡大も期待できるため、多くのチャンスが眠っています。
ヘルスケア産業は、今後もイノベーションを創出し続ける注目の業界といえるでしょう。
(TOP写真提供 = Dylan Gillis/ Unsplash.com)
《参考記事一覧》
数字で見るヘルスケア産業 2030年、37兆円規模に(事業構想オンライン)
ヘルスケア事業を推進する3つのポイントとは?(TISインテック)
世界のヘルスケア分析市場規模―2021-2027年の予測期間中に31%のCAGRで拡大すると予測(PR TIMES)
ヘルスケア業界(医薬品、医療機器、医療IT、他)の現状と展望(キャリアインキュベーション株式会社)
ヘルスケア業界の概況と課題(キャリアインキュベーション株式会社)
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