「美しいサッカー」「チームが勝つ」だけでは人は集まらない…現役アスリートに刺激をもたらす、世界のスポーツビジネス事例【HALF TIMEアカデミー】

世界のスポーツビジネス界で活躍する海外の講師陣が教鞭を執る『HALF TIME Global Academy』の第2期が2020年10月に開講。全4回の講座では、世界のスポーツ界で取り組まれている最新のビジネスが紹介された。2021年1月からは第3期がスタートするが、それに先立ち第2期を受講した2名のサッカー選手、鈴木惇選手と栗本広輝選手に話を伺った。(聞き手は小林謙一)

現役アスリートが感じる、スポーツ現場の課題

鈴木惇選手。「選手自身がビジネス目線を持つこと」の大切さを感じたという

――HALF TIMEアカデミーの第2期生として受講していただきましたが、まずはプロフィールをご紹介いただけますか。

鈴木惇(以下、鈴木):9歳からクラブの下部組織に所属していまして、2007年にJリーグデビューしました。その後、移籍を挟んで、2018年から再び現在のチームに所属しています。

栗本広輝(以下、栗本):大学を卒業と同時にJFLのチームに所属して6年、その後はUSL(米国サッカーリーグ2部)のフレズノFCに加入して、2020年よりコロラド・スプリングス・スイッチバックスFCに移籍しました。MLS(同1部)にヨーロッパのトップ選手が移籍してとても盛り上がっていると聞いて、渡米することを決意したんです。

鈴木:実は、私もサッカーを始めたのはアメリカにいる頃なんです。3歳から5歳までバージニア州にいたことがあって、公園の芝生でサッカーをしていました。アメフトや野球、バスケもしてみて、サッカーが一番好きになったんですね。アメリカではどこに行っても芝生があるし、スポーツをする環境が整っていると感じますね。

栗本:そうですね。私は幼稚園の頃に兄の影響でサッカーを始めて、高校や大学の部活でプレーしてきました。最近はアメリカの大学に進んでサッカーをして、そのままMLSデビューを目指すプレーヤーもいると聞きますね。

――HALF TIMEアカデミーはスポーツビジネスの理論と実例を学ぶ場ですが、現役アスリートのお二人が受講しようと思われたきっかけは、何だったのでしょうか?

鈴木:私はプロ1年目に早稲田大学人間科学部eスクール(通信教育課程)に通い始めて、その後はグロービス経営大学院で経営学を学びました。そのことを知っていたクラブ職員の方からつながって、HALF TIMEアカデミーの存在を知ったんです。

プロになってプレーをしているなかで、ホームゲームのスタジアムは満員にならないといけないなと感じたんです。大勢の観客の中でプレーするのは選手はもちろん気持ちがいいですし、クラブも潤いますし、スポンサーの広告効果も高まります。

若い頃は漠然と、美しいサッカーさえしていればヨーロッパのように人が集まると思っていたのですが、日本ではそうではありませんでした。スポンサーやサポーターと話してみても、選手の意識と乖離している部分もあり、サッカーのプレーの追究だけではダメだと感じました。そこで、選手自身がビジネス目線を持つことが、クラブ経営にもっとプラスになるのではないかと考えたのです。

栗本:私はアメリカのサッカーリーグに興味を持ったときに、中村武彦さん(Blue United Corporation CEOで、HALF TIMEアカデミー学長を務める)と知り合うことができたんです。その縁で受講しました。

JFLのころに、チームが勝っても観客が集まらないという経験をしました。サッカーの内容がいいだけではダメなんだなと。どうやらMLSが盛り上がっているらしいと知ってアメリカに渡りましたが、サッカーの本場であるヨーロッパからトップ選手がMLSに移っていくのはなぜなんだろう?という素朴な疑問を抱きました。その内側を学びたかったんです。選手ではありましたが、スポーツビジネスという視点を持ってみてみたいと思ったわけです。

「オンザピッチ」と「オフザピッチ」の最適解を見つける

栗本広輝選手。渡米を決めたのは「MLSの盛り上がりを聞いて」

――講義は「マーケティング」「スポンサーシップ」「強化部」「放映権」という4回の構成でしたが、学んだことや気付きとなったことはありますか。

鈴木:どの回も新しい発見がありましたが、ラスベガス・ライツのCEOの方の言葉は印象に残っています。「勝敗は約束できないけど、スタジアムに来てくれれば笑顔にすることは約束できる」というものです。

もちろんこれは経営者の発言で、選手としては勝利を目指さなくてはならないのですが、どのように自分に落とし込めるのかを考えましたね。日本とアメリカでは事情が違いますから、そのままマネすることはできないけど、現状を把握して、どう取り組んでいくか考えなければならないという課題を意識しました。

栗本:私もラスベガス・ライツの事例は印象的でした。現金を降らせるなんて、生々しいなと思いました(笑)。

でもあれは「ギャンブルの街であるラスベガスだから行った」という意図を講義で知ることができて、なるほどなと納得しました。その土地の象徴的なものを行うことで、効果的で、印象に残るおもしろい取り組みになっていたわけですね。

(※ラスベガス・ライツFCではヘリコプターからピッチ上に現金をバラ撒くという奇抜な企画が毎年恒例となっている。ホテル・カジノを運営するスポンサー企業のアクティベーションと、集客・ファンエンゲージメント施策としての意味がある。)

それから、シアトル・サウンダーズのスカウティングにも驚かされました。チームとしてどこを目指すかをしっかり設定して、そこに必要な要件を満たしている選手をチェックしていく。これって、一般的なビジネスでは当然に行われている評価手法だと思うんですけど、それがスポーツにも活用されているんだということがわかりました。

――それぞれ学んだことを、今後はどのように活かしていきたいと考えていますか?

鈴木:学んだことを「すごいなぁ」で終わらせてしまっては意味がないですよね。現役プレーヤーの立場で、集客プロジェクトなどをやってみたいなと思っています。日テレ・ベレーザ(当時)の籾木結花選手が「5000人満員プロジェクト」というのを行っていましたが、選手だからこそできることがあると思うんです。

それから、いまAIやディープラーニングを学んでいるのですが、「サッカーを数値化」することに興味を持っています。いまサッカーではいろんなデータが取られていますが、それらを目的化して活用しているクラブはまだまだ少ないと思います。現役ならではの視点で、勝ちにつながるデータ分析に取り組んでみたいですね。

栗本:来年もアメリカでプレーする予定ですが、スポーツビジネスという視点を持って、引き続き学んでいきます。そして現役選手というポジションから、現地の情報を日本に発信していきたいなと。そして、日本のいいものも、アメリカで紹介できるようになったらいいなとも思っています。

セカンドキャリアにも大きな示唆

――最後に、来るご自身のセカンドキャリアも見据えて、将来的に取り組みたいことなどをお聞かせ願えますか

鈴木:やはり、育ってきたクラブに恩返しがしたいですね。ホームゲームのスタジアムを満員にする仕組みを作りたいです。

いま私の地元で“スポーツチーム”といえば、今年日本一になったプロ野球のチームを挙げる人がほとんどだと思いますが、ゆくゆくは私が所属するJクラブの名前を挙げる人を増やしていきたいですね。でも、野球ファンを奪うつもりはなくて、地元をスポーツで一緒に盛り上げていければいいかなと。ファンになってくれた人が結婚して、子どもができて、またスタジアムに戻ってきてくれたりしたら、とてもうれしいと思います。

栗本:私は、サッカーを通じていろんなことを学んで、多くの人と出会うことができました。そして、大いに成長させてもらいました。子供の頃は観客としてサッカーを楽しんだし、いまは選手として真剣にサッカーに取り組んでいます。スポーツほど、人の心を動かすものってないと思うんです。それをもっともっと盛り上げたいですね。私自身がスポーツのことをたくさん知ることで、貢献できるのではないかと思っています。

■対談の様子はこちら


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