スポーツ産業の歴史と流れ|異業種との連携による発展

日本のスポーツ産業が、「スポーツ用品産業」「スポーツ施設・空間産業」「スポーツサービス・情報産業」の3つに分かれていたのは今や昔。

3つの領域がそれぞれに混ざり合い、そして、周辺領域が重なることによってスポーツ産業が発展してきました。

国内スポーツをもっと盛り上げるには、企業間同士のつながりはもちろん、国や地方自治体との連携が大切です。

スポーツ産業とは?

スポーツ産業とは、スポーツに関わる全ての産業のことを表す言葉です。

つまり、スポーツ産業とはこういう産業ということではなく、いろいろな産業が合わさった産業であるといえます。

  ・スポーツ産業の市場規模

2012年のデータによると、日本のスポーツ産業の市場規模は11兆4000億円となっています。

その内訳は

・公営ギャンブル:4兆円

・施設運営:2兆円

・小売の売上:1.7兆円

・スポーツ教育:1.5兆円

・放送やエンタメ:0.4兆円

・興行収入:0.3兆円

と発表されていて、ギャンブルと施設運営が市場の大半を占め、放送や興行収入という分野ではそこまで稼げていないことが分かります。

 ・様々な企業がスポーツ産業に参入

近年、

・株式会社タニタ(食堂事業)

・株式会社NTTドコモ(IT事業)

・株式会社スポーツITソリューション(IT事業)

・近畿日本ツーリスト(旅行事業)

・西鉄旅行株式会社(旅行事業)

などの企業がスポーツ産業に参入しています。

一見してスポーツとは繋がりのなさそうな業種の企業がどんどんと参入しているのです。

・世界のスポーツ産業

世界のスポーツ産業は拡大路線にあります。

スポーツイベントによる収入は、2009年が5.8兆円だったのに対して、2013年には7.6兆円に。

今後の成長も期待されています。

世界で一番スポーツ産業が盛り上がっている国がアメリカであり、2016年のアメリカのスポーツ産業の市場規模は50兆円と言われています。

アメリカの誇る4つの巨大プロリーグに加え、アメリカで盛んな大学スポーツが巨大な市場を作っているといえます。

スポーツ産業の構造の移り変わり

 1990年、スポーツ産業の発展と成長を促す目的で、「スポーツビジョン21」という政策が策定されました。

このスポーツビジョン21は、スポーツ産業を3つに分けるものでした。

・スポーツサービス情報産業(スポーツ旅行やスクールなど)

・スポーツ用品産業(スポーツ用品の製造と販売など)

・スポーツ空間産業(リゾート産業や、都市型スポーツ施設の運営など)

このような分け方によって、それぞれの産業が独立してました。

しかし、現在ではそれぞれの産業が混ざりあうことで、より多角的にスポーツ産業が行われているのです。

○領域別に見るスポーツ産業の歴史

スポーツ産業の歴史を「スポーツ用品業界」「メディア業界」「施設業界」という業界別にみていきましょう。

・スポーツ用品業界

スポーツ用品業界は、安定的に拡大している業界です。

人口減少によって、スポーツの競技人口は減少しているものの、スポーツシューズやアパレル用品を日常生活で着用できるようにしたことで、生活アパレルとしての需要が高まっています。

さらに、ゴルフ用品市場が持ち直しの傾向にあることから、国内のスポーツ用品市場が拡大しているのです。

 ・メディア業界

スポーツ業界とメディアは、深い関係があります。

球児たちの憧れである甲子園野球も、もともとはスポーツビジネスの一環として始まったのです。

1915年、朝日新聞社が「全国高校野球選手権大会」を開催するなど、1900年代の初頭から新聞社がスポーツイベントを主催するようになりました。

その後、1950年代にはラジオ局やテレビ局が開局。

60年に行われたローマオリンピックは日本のテレビ局も放送し、64年の東京オリンピックでは、世界21カ国へ放送されています。

メディアがこぞってスポーツをとりあげるのは、視聴率や新聞の売り上げをのばすためであり、ビジネス的な要素からスポーツ中継が始まったといえます。

現在では、インターネットなどを使用することで情報を発信するメディアが増えています。

 ・施設業界

スポーツの施設業界は、

・学校教育スポーツ施設

・公共スポーツ施設

・民間スポーツ施設

という3つの施設に分けられます。

学校教育スポーツ施設とは、学校のグラウンドや体育館のことです。

全国には20万か所のスポーツ施設が存在していますが、そのうちの13万か所は学校が所有しています。

こういった学校保有の施設は、基本的にビジネスとしては使われていませんが、近年では地域の人などに貸出を行うところも多いようです。

公共スポーツ施設は全国に5万か所あります。

地域の住民が気軽にスポーツを楽しめるように、格安か無料で使えるようになっています。

公共施設の運営は自治体がメインですが、近年では一般企業の運営も増え、ビジネス化の流れが進んでいます。

スポーツ産業活性化にむけた取り組み

スポーツ産業を活性化するために

  • スタジアムやアリーナの建設
  • 他業種との連携
  • 競技団体の経営力強化
  • 関係省庁や自治体との連携

などの取り組みが行われています。

・スタジアムやアリーナの建設

スポーツ産業を活性化するために、スタジアムやアリーナの建設がすすめられています。

実際にスポーツを行う機会だけでなく、スポーツを観戦するなどスポーツに触れ合う機会を増やすことで、スポーツ界を盛り上げようとしているわけです。

 ・他産業との連携

スポーツ産業は今、他産業との連携が大きなカギとなっています。

先述した、食品産業や旅行産業といった業種の他にも、マネジメント企業と連携することでスポーツをより広い範囲に広めたり、イベント会社と提携することでより魅力的なスポーツイベントを開催したりなど、とどまるところをしりません。

スポーツ産業そのものと、連携する業種それぞれがウィンウィンになる関係を作ろうとしているのです。

・競技団体の経営力強化

現在、オリンピックを前に、国をあげて取り組まれているのが競技団体の経営力強化です。

その主な指針として、中央団体の収益力強化や、大学スポーツ検討会議の実施などが挙げられます。

競技団体の経営力をアップするには、中央競技団体の健全化が必要不可欠です。

そのため、現状の課題の整理やマーケティングの実施などによって顧客満足につなげ、団体の安定化を図るのです。

また、アメリカで実施されている大学スポーツの振興も行おうとしています。

その一環として、大学スポーツの収益拡大につながる情報の収集や、学生アスリートへの支援などが検討されています。

大学スポーツが人気コンテンツになれば、日本スポーツ界の大きな収益源になることでしょう。

・関係省庁や自治体との連携

スポーツ産業を盛り上げるためには、関係省庁や地方自治体との連携が不可欠です。

その理由は、前述したとおり、日本のスポーツ施設のほとんどが、教育的スポーツ施設や公共のスポーツ施設であるということ。

つまり、それらの施設を運営している国や地方自治体との連携や協力なしでは、スポーツ産業を盛り上げることは難しいといえます。

また、地域とプロスポーツを密着させるための新事業の開拓にも力を入れる必要があります。

その新事業の検討も進められています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

日本のスポーツ産業は、今やスポーツ業界だけでなくさまざまな業種が入り組んでいる状態にあります。

まだまだ検討段階ではあるものの、2020年に迫ったオリンピックを前に、少しずつ拡大に向けた動きが見られます。

地方自治体・教育機関・企業が一団となって、スポーツ界を盛り上げていけるといいですね。


【参考記事一覧】

スポーツ産業振興で連携 さいたま市や埼玉大など(日本経済新聞)

2020年を契機とした国内スポーツ産業の発展可能性および企業によるスポーツ支援(株式会社日本政策投資銀行 地域企画部)

スポーツとスポーツ産業(株式会社日本政策投資銀行 地域企画部)

スポーツ産業は、こうやって活性化する(SPORT INOVATIONS)

スポーツ産業の活性化に向けて(スポーツ庁 経済産業省)

スポーツ産業ってなに? 【その1 日本標準産業分類】(ゼロからのスポーツビジネス入門)

スポーツ産業市場の拡大に向け、スポーツ庁が描く青写真とは?(MARS CAMP)

【スポーツ産業の市場規模】世界と日本の現状の課題と将来性とは?(JOBO)

日本のスポーツビジネスはどうやって発展してきたの?スポーツとメディアの関係(ゼロからのスポーツビジネス入門)

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